新型コロナ感染症によるパンデミック~歴史から学び、将来に伝えるべきこと

現在、世界中で新型コロナウイルスによる感染が拡大している。今回の感染症については日本でも欧米各国でも第二次世界大戦後75年の間に発生した最大の国難として捉えている。

各国とも、人命が脅かされているだけでなく、人間のあらゆる社会的活動が機能不全に陥っている。「人類の歴史は感染症との闘い」と言われており、歴史の教訓を記録に残し、忘れずに次に生かすことが大切である。

ところで、近年の日本でパンデミックに襲われ、大きな被害を受けたのは1918年の「スペイン風邪」である。今から約100年前のことであるが、資料集や新聞などを調べてみると私たちが今、経験していることや予防法などは重なっている部分が多い。感染拡大の第2波、第3波への備えが必要な今だからこそ、当時の記録や紙面から教訓を得ることが出来る。

世界人口の3分の1が感染したスペイン風邪

スペイン風邪は第一次世界大戦末期の1918年3月に米国で発生が確認され、1920年頃まで世界中で流行したインフルエンザである。1922年日本内務省衛生局編集『流行性感冒・スペイン風邪大流行の記録』(2008年翻刻)によると日本国内では第1波(1918年8月~1919年7月)、第2波(1919年10月~1920年7月)、第3波(1920年8月~1921年7月)と流行が発生した。

当時の日本の人口約5700万人のうち、感染者は約2380万人、死亡数は約39万人に上った。世界では人口のおよそ3分の1が感染し、死亡数は4000万人以上とされる。

当時の各新聞紙面では「師範学校と女子師範学校で、それぞれ100名ほどの患者を出したので一週間休校(18.10.24.よみうり)」、「様々な職種に感染や死亡が及び郵便局・電車・炭鉱なども休業(18.11.3福岡日日新聞)」、「流行性感冒で看護婦大欠乏、ベッドも器具も足らず(19.1.29.よみうり)」、「電車に乗る時はマスク奨励(19.2.4.よみうり)」、「衆人の集合する場所にはなるべく立ち寄らざること(19.2.6.よみうり)」、「死亡者多数をよそ
に見て劇場、活動写真、相撲が大繁盛。予防が不徹底の感に耐えぬ(20.1.18,よみうり)」などと掲載されていた。

感染防御や社会機能維持のための対応を

感染予防として人との接触即ち3密(密閉、密集、密接)を避けることや、マスク、咳エチケット、うがいなど衛生上の注意は今も昔も同じである。社会的混乱・医療崩壊なども100年前も今と同様であった。

現在のコロナ禍はワクチンや特効薬の開発までは当分続く可能性がある。ウイルスとなんとか共生していくしかない。第2波、第3波を予測して、感染防御や社会機能維持のために柔軟な対応を覚悟しておく必要がある。それとともに、パンデミックの収束には国際社会の連携と協力が不可欠であることを忘れてはならない。

更にここへきて第2の医療崩壊ともいうべきものが発生していることを注視する必要がある。コロナ以外の一般患者の減少による収入減で9割に及ぶ病院や個人医院が経営上の困難に陥っている(日本医師会横倉会長談、大阪府保険医協会調査)。その結果の閉院や廃業も考えられ、日本の地域医療に暗雲が立ち込めている。

新型コロナウイルスとの闘いの中で、作家・井上ひさし氏の「記憶せよ、抗議せよ、そして生き延びよ」という言葉が改めて注目される。


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