新型コロナ対応を振り返る―科学的根拠に基く計画的ワクチン行政を

昨年から続く新型コロナウイルス感染症(以下コロナ感染症)は、時間経過とともに、依然次々と課題が浮かび上がっている現状である。

海外では当初、アメリカやブラジル、あるいはヨーロッパ諸国などでコロナ感染症の罹患者数、死者の数が著明に増加し、ロックダウンなどの緊急措置がとられた国もあった。

その際、日本は人口比率から換算しても感染者・死者の数が少なく経過しているということで、一定の高評価を受けていた時期もあった。だが、注目すべきはそれ以前、記憶にまだ新しいダイアモンド・プリンセス号の一件での初動対応の不備である。この一件が感染者を国内に拡げる一つの要因となってしまった。

そして、その対応のギクシャク感、科学的根拠を持たない政治対応は、今年から開始された、新型コロナウイルスワクチン(以下コロナワクチン)を視点においた時も相似形であることに気づく。

コロナワクチン行政に目を向けると、諸外国に比べて予防接種実施の遅れ、予防接種にあたっての国民への通知の不十分さ、ワクチン接種実施に協力する意思を示した医療機関へのワクチン配給の段取りの悪さなど、様々な問題点が表出されている。

接種希望者はネット回線を用いての予約といった、とりわけ高齢者にとっては不慣れなデジタル機械の操作などで翻弄され、家族総動員で予約を試みた、などという話も耳にしてきた。

規模の大小を問わず予防接種に手上げをした個別接種実施医療機関では、ワクチン接種施行に際しての煩雑な種々の手続き(V-SYSシステムへの入力作業など)に手を取られ、また終日問い合わせの電話がなりっぱなしで職員が対応に追われている有様である。

コロナワクチンの保管方法も、ファイザー社製品は冷蔵保管日数が5日から30日に変更、また接種対象年齢の12〜15歳までへの引き下げが公示されるなど、連日のように取り扱いに関する情報は変化しており、現場は振り回されている状態だ。

集団接種においては会場まで足を運べない高齢者・障がい者・独居寝たきり患者にはきわめて敷居が高いものである。また、ワクチン配給の手順の乱れ、その他等により接種会場に集まる人々の数が拍子抜けするほど少ない日も見られたようである。

多くのコロナワクチン普及に際しての問題点は、政府が計画的な対応をしてこなかったことが原因である。いつ、どれくらいの量のワクチンを配給するのかが明らかになっていない状況で自治体、医療機関、国民は迷走させられた。

発症予防・感染予防の頼みの綱のコロナワクチンだが、接種すればすべてが解決するというわけではない。短期間で開発されたワクチンの安全性を問う声もあり、国民の間ではワクチン万能思想ともいえる不用意な行動も今後懸念される課題だと考えられる。

コロナ感染症を終焉に向かわせるためには、科学的根拠に基づき冷静な視点で引き続きコロナワクチン行政に関して注視・提言してゆく必要がある。そして職能集団である私たち医師の役割もきわめて重要である。


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