感染症拡大と群集心理―コロナ禍2年目の市民生活

日本ではじめて新型コロナウイルス感染者が発見されたのは2020年1月であった。それから1年以上経過したが感染拡大に歯止めがかからない。自粛生活もそこそこしてきたが2021年3月にはついに第四波が襲来した。頼みの綱のワクチン接種は諸外国より相当遅れており、さらに変異ウイルスが増え感染拡大を助長している。

このような状況の中、我々市民の暮らしはすっかり変わった。様々なストレスが心身に影響を与えている。最初は感染した人の抑うつ、その家族への偏見、自分も感染するのではないかという恐れ、医療・介護スタッフの負担やその家族への影響に関する懸念が主であった。しかし感染が長引くにつれ、様々な問題が社会全体に拡がってきた。

企業における在宅勤務は業務内容を変え、自宅で仕事をするという変化は家族関係にも変化をもたらす。飲食業をはじめ、多くの分野の仕事において客数の減少が危機的状況を招いている。医療・介護分野も例外ではない。教育の面でも大きな影響が出て児童や学生にストレスを与えている。

ところで感染の集団発生は、災害の一つであり、戦争などと同様に、やり場のない怒りや不安、恐怖などこころの問題が大きい。この状況は群集心理が発生する可能性が高い。

群集心理とは、群集の中に生まれる特殊な心理状態のことで、衝動性・興奮性が高まり、判断力・理性が低下してくる。人々は付和雷同しやすく、デマが影響力を持つようになる。また自粛の期間が長く続くと誰もが抗禁反応に陥りやすくなる。この状態ではマイナスの情報ばかりが目に入り、群集心理に巻き込まれやすい。

このような危険な状態から抜け出すには『自分の置かれている状況や今後の展開を把握できる』『なんとかなる』『どんなことにも意味がある』という感覚を個人が持てることが大事であると云われている。それには信頼できる情報伝達および不安解消のための施策が必要である。

さらに、新型コロナウイルス感染症は、日本社会に潜在する矛盾や差別、政治の劣化をあぶりだした。格差はますます増大し、非正規雇用者、女性、児童・学生、高齢者など、もともとの弱者に圧力がかかってくる。

自助・共助では限界がある。こういう時こそ適切な公的支援の拡充が必要であり、国の政治力が問われる。しかし現状は、政治不信が拡大し、人々の不安を煽っている。この状況では群集心理が働き、市民の行動が非理性的な方向に走っていくことが危惧される。

これを打開するためには、我々は医療者として、市民として、国や自治体に対して積極的に意見や提言をしていくことが重要であろう。


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