医薬品は健康を守る大切なツール 国が果たすべき適切な管理責任

後発医薬品は、増大する医療費の削減対策として1990年頃から注目されてきた。初期の頃は品質や安定供給の面から後発品が忌避されがちであったが、診療報酬による国の強力な誘導のもと、特許切れの処方薬のうち約8割が後発品に置き換わっているのが現状である。

2020年12月に後発医薬品メーカー小林化工の水虫薬「イトラコナゾール錠」に睡眠導入剤の成分が混入したことが発覚。この薬の服用が原因で生じた意識消失や記憶喪失等の健康被害は200件以上報告された。

また、日医工では出荷検査で不合格となった錠剤を取り換えて再検査したり、錠剤を砕いて再加工したりするなどの不正が、県による抜き打ちの立ち入り調査で明らかになった。少なくとも2011年から10年間、工場長の指示による組織ぐるみの不正だったという。

これらの不祥事を皮切りに、他の後発品メーカーも自主点検を始め、承認書と異なる製造方法で製造していたことなどで自主回収が相次いでいる。また、問題のなかったメーカーでも、先発・後発を問わず、出荷停止となった薬品の代替品として需要が急増し、生産が間に合わずに出荷調整をかけざるを得ない状況になっている。

およそ年間生産800億錠の後発医薬品のうち1割の流通が滞っており、このため医療の現場では大混乱をきたしている。骨粗鬆症薬や抗アレルギー薬、循環器系薬剤などの供給が停止し、他社の製品に変更するも、あおりを受けた他社製品も滞り、ドミノ倒し状態である。

患者は次々に変わる薬剤に不安を感じ、剤型の変化により飲み間違いも起こる。また先発品に変更になれば、窓口負担が上がる。

現在、日本で後発医薬品に参入する企業は約200社。生活習慣病などニーズが高い医薬品には、10~20社もメーカーが競合する。安価な後発品は利益が薄いので、人件費や材料費削減に手を染めたりせざるを得ない傾向にある。その結果が工場の管理体制の緩みにつながったのではないか。

米国のFDA(米食品医薬品局)の査察は厳しい。自国の製薬会社のみならず、他国にある製薬工場にも抜き打ちで査察に入り、不正を暴いてその会社の製品の対米輸出を禁止したりしている。一方、日本版FDAである厚労省所管のPMDA(独立行政法人医薬品医療機器総合機構)は、行政官の数も少なく、査察もFDAより緩いといわれる。

医薬品は我々医療者が、国民の健康を管理する大切なツールの一つである。医療費の削減のために後発品使用を推進するだけでなく、医薬品の安全性や供給に対して、国はきちんと管理して責任を持つべきである。


保険医新聞掲載

ページ上部へ戻る