全世代にこれ以上の負担を押しつける医療改悪は許さない

11月7日、財務省主計局官僚と面談した。主計官は「持続可能な社会保障」であるためには「給付と負担の均衡」が前提であると強調した。このフレーズは官僚総てが枕詞として発している。だが果たしてそうだろうか。「国が助けてやってるんだから、君たちもそれなりに自己負担すべきだろう」と聞こえ、中央政治の冷たさを改めて感じた。

その上で後期高齢者医療制度の現状を考えたい。75歳以上に適用される後期高齢者医療制度は2008年に施行され、団塊の世代が全て75歳となる2025年に向け対象者は増え続ける。制度発足の目的として「適切な医療の確保、医療費の適正化、国民の共同連帯、自助と連帯の精神」が掲げられたが、真の狙いは医療費削減に留まらず、社会保障費全般の削減にあるのは明らかである。

安倍政権は、アベノミクスと称し市場原理主義に基づく企業利益を最優先する経済成長戦略を遂行してきた。そして誰もが人として相応しい生活をする権利を未来に向け謳った憲法25条に敵対し、社会保障費への国費の持ち出しを障害物とみなしてきた。予断を許さない診療報酬マイナス改定案に加えて、来年度の予算案に盛り込まれる超高齢社会による社会保障費の自然増5300億円を、さらに1300億円削減する方向で検討に入っている。〝医療人として今声を上げずして、いつ上げるのか〟という事態である。

高齢者にとって生活の不安は極限状態となっている。人口の約29%が65歳以上の高齢者であるが、高齢者がいる世帯の貧困率は27%で、女性の単独世帯では56%に達している。高齢無職世帯の平均年間収入は単身140万円で実質的生活保護基準を下回っている。高齢夫婦の無職世帯でも251万円程度で、苦しい生活を強いられている。

年金については、金融庁の「老後資金2000万円貯蓄の勧め」報告が現役世代に衝撃を与えたように、安倍首相が議長を務める「全世代型社会保障検討会議」の狙いは、高齢者のみにターゲットが絞られているのではなく若年層まで網羅する全世代に給付の削減と負担増を求めることにある。

11月8日の「全世代型社会保障検討会議」で激しい攻防が展開されている医療改悪の具体例

は、①75歳以上の窓口負担を原則1割から2割に引き上げる、②OTC薬がある医薬品は保険外とする、③外来受診時の定額負担など、いずれも国民に痛みを伴う懸案ばかりである。

先述したように高齢者の生活環境は極端に悪化しており、窓口負担増になれば受診抑制は明白であり、疾病の悪化は当然予想される。全世代に対する蟻の一穴的狙いが隠されている花粉症の治療薬等が保険外になれば、自己診断で受診しない患者が続出し、医療の質の低下に追

い打ちをかける事態となろう。さらに外来時毎の定額負担は、自己負担上限を3割以内とする現行健康保険法違反である。直ちに撤回する大運動に取り組まねばならない。

来年1月から、全国の保険医協会は一斉に医療・介護の改悪に反対する患者署名を集める。患者が困るだけでなく、地域医療を守り発展させるための努力を惜しまない会員にとっても正念場の重要な署名である。

高齢者の生活は厳しく、医療・介護・年金改悪によって治療中断・受診抑制患者が増え、重症化が危惧される。患者との対話・交流を広げながら、社会保障改悪の動きを待合室から食い止めるために、先生方、スタッフ皆さんの力をお貸しいただきたい。


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