メリット皆無の「義務化」は撤回を―国民の側に立つ医師として断固反対

中医協は8月10日に、医療機関等に対して、2023年4月からオンライン資格確認の導入を原則義務化する内容の答申を行った。「オンライン資格確認義務化」が療養担当規則に記載されると、これに応じなければ、監査・指導の対象、果てには、保険医・保険医療機関の取り消しになるのではとの懸念もあり、注視しなければならない。

一方、国民にとっては、国の「骨太の方針」で従来の健康保険証の原則廃止をめざす方針が明記され、「マイナンバーカードを登録申請し、保険証と紐付けなければ医療が受けられない」という危険性がある。国民の医療を受ける権利までも奪い取るかもしれない。

つまり、今回の拙速なオンライン資格確認義務化は、医療機関にも国民にも何らメリットのない政策であり、断固反対だ。

しかし、原則義務化について三師会は、8月24日に厚労省との合同説明会を開催しており、むしろ促進の方向で進めている。戸惑う開業医も多いと思われるが、開業医や国民に何らメリットのない制度を促進させる理由がわからない。

オンライン資格確認の運用開始施設は、全国の医科診療所で未だ2割程度にすぎない(9月4日時点)。紙レセ医療機関を除く残り8割の医療機関に対して、来年4月までにオンライン資格確認導入を強いるつもりであるが到底困難である。

保団連の調査では、オンライン資格確認を運用開始した医療機関の3分の1でトラブル発生の報告がある。このうち特に多く報告されたのが、①データ上のトラブル、②機器関連のトラブル、③業者とのトラブルであった。デジタル化の流れは進んでいるが、全国の医療機関からアクセスが殺到し、サーバーダウン等を引き起こすのは火を見るより明らかである。受付事務の仕事量を増やすことにもなり、患者不満が増えるのは想像に容易い。

また、オンライン資格確認導入整備補助金の対象は今年12月末までに顔認証付きカードリーダーを申し込んだ医療機関であり、今しばらくの間、静観する余裕はある。むしろ導入後のランニングコストは医療機関の持ち出しとなるため注意が必要だ。

私たち開業医は個人事業主であり、国に雇われているわけではない。運営に国からとやかく言われる筋合いはない。個人事業主は現在でも多大な制約の中で、国民の医療を担っているのであり、何のメリットもないオンライン資格確認導入義務化は受け入れがたく、この点でも断固反対だ。

オンライン資格確認は国民にマイナンバーカードを普及させ、保険証を紐付けて、その保険料を支払う銀行口座を確認し、国民の資産を管理することが目的の一つであると考えられる。

過去に遡ってみると、2004年に経団連が提案した〝死後清算〟は医療従事者として知っておくべきだ。経団連は「社会保障個人会計の導入」を掲げ、個人が亡くなった際、相続財産から「手厚すぎた」と思われる給付金を回収することを提案した。国も同様に医療費において、追加医療費等の徴収を狙っているのではないか。国民の側に立った医療従事者として、国民の不利益の片棒を担ぐのはまっぴらご免である。


保険医新聞掲載

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