コロナ禍で苦しむこどもたち 子育てのしやすい社会制度を

衆議院選挙開票翌日となる11月1日、本年度の児童虐待防止月間が幕開けた。

厚生労働省は、2020年度に全国の児童相談所(児相)が対応した虐待相談件数が前年度比5.8%増の20万5029件と発表した。警察庁も、児童虐待疑いで児相に通告した件数が、前年度比8・9%増加と発表した。文部科学省統計でも昨年度の不登校は、前年度比8.2%増の196万人、自殺した児童・生徒は415人と過去最多だった。

国立成育医療センター社会医学研究部・こころの診療部のアンケート調査では、先生や大人に相談しにくくなっているこどもたちが過半数であると報告されている。コロナ禍で、投票権のないこどもと、投票率が低い子育て世代が追い詰められている。

教育財政学が専門の末冨芳氏と貧困問題が専門の桜井啓太氏の新刊共著『子育て罰:「親子」に冷たい日本を変えるには』では、子育て世帯を社会的経済的に苦しめる制度・慣行を、「child penalty:子育て罰」と定義している。日本は、子育てを「自己責任」とみなし、OECD加盟国中、家族関連社会支出が極端に少なく、低所得層に冷たいだけでなく、勤労所得が上昇する程、累進課税や保険料で可処分所得が低減する上に、保育園料は高くなり、児童手当や高校無償化や奨学金の対象外となり、中所得層・高所得層にも冷たい。

欧州では、こどもを権利の主体と見做し、児童手当を所得制限なく普遍給付し、低所得層には積み増している。日本では、中高所得層は制度の対象外と切り捨てる政治家が与野党の多数を占め、分断給付が制度化されている。

本年5月に、世帯主の年収1200万円以上の世帯の約61万人のこどもをゼロ支援とし、新たな保育所整備などに充当すると国会で可決された。こども達から年間389億円を奪い取った張本人の菅義偉前首相は、「こども庁」の創設を目玉公約に予定したが、自身の支持率低下から退任に追い込まれた。

岸田文雄新首相は「新型コロナ対応」「新しい資本主義」「外交・安全保障」を中心に所信表明演説を行った。「新しい資本主義」の内容は、財務省主体の「国の分配機能の強化」で、何らの新規性もなく、勤労子育て世帯への無制限の収奪と社会経済制度からの分断差別に繋がりかねない。

充分な審議もなく、衆議院を解散し、10月31日に投開票が行われた。与野党の中堅若手議員は、超党派の有志勉強会を組織し、「子育て罰」をなくすことができる財源、人員増やこどもの権利の保障等に踏み込んだ内容の提言をしていると言う。衆議院選挙を勝ち抜いた与野党中堅若手議員の活躍に期待する。


保険医新聞掲載

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