ギャンブル依存症集団療法の保険 収載を隠れ蓑にするカジノ推進

今回の診療報酬改定により、依存症集団療法は「薬物依存症の場合」と「ギャンブル依存症の場合」に再編された。「ギャンブル依存症の場合」は、専任の精神科医および専任の看護師または専任の作業療法士がそれぞれ1名以上勤務している依存症専門医療機関において、ギャンブル障害の標準的治療プログラムに沿った指導を、1回に10人に限り、60分以上実施した場合に算定できると定められた。厳しい届出要件は変わらず、多忙な日常診療から現実離れした改定である。

2017年時点の厚労省調査では、パチンコ、スロットマシン、競輪、競馬、競艇などのギャンブル依存症の生涯経験者数は320万人、成人の3.6%と推定された。カジノ解禁になればさらに上積みされることになる。アルコール依存症107万人の3倍、覚せい剤や大麻の薬物依存症216万人の1.5倍である。

総合的なギャンブル依存症対策は最近講じられるようになったばかりであり、相談業務は保健所、精神保健福祉センターで7年前に始まった。

2017年の相談件数は保健所1473件、精神保健福祉センター3370件と少なく、積極的に対象者に接触していく態勢はなく待ちの姿勢であり、ごく一部しかカバーできていないのが現状である。COVID-19感染でも重要視される保健所機能であるが、ギャンブル依存症対策としても充実が喫緊の課題である。

そのことと関連して依存症対策の予算がどれほど確保されているかを見ていきたい。自助グループ等民間団体支援含めアルコール・薬物・ギャンブル総ての予算が国家として8.1億円、「依存症対策のトップランナー」と胸を張る大阪府・大阪市の「ギャンブル等依存症への取組」では1582万円と微々たる予算額である。これではIR・カジノの推進と依存症を統合的に力を入れるという建前は、すでに崩れているのは明白である。

そのような状況を踏まえた上で、今回の診療報酬改定に記載されたギャンブル依存症集団療法新点数は、カジノ推進の隠れ蓑に過ぎずはなはだ疑問である。

国民・医療機関に痛み押し付ける政策

今年度の診療報酬改定は、本体部分0.55%増とされているが、社会保障費の自然増分5300億円をさらに1200億円圧縮し、4100億円とした上での改定であり、国民・医療機関に多大な痛みを押しつけるものとなっている。そのような中でのギャンブル依存症集団療法の保険収載は、項目として挙げられても、届出要件は厳しく、実を上げられないのは明らかである。

私たちは、患者・住民・地域を丸ごと健康にと願う立場から、反対70.6%、賛成21.2% (共同通信)の世論調査結果が示している利権まみれのカジノを中止させることが、ギャンブル依存症対策の第一歩であると考える。

カジノ計画を断念し、すでに600万人にも達する既存のギャンブル、アルコール、薬物依存症で苦しむ患者に、治療を保証する施策を優先すべきと考える。

そして医師の技術料である再診料、初診料などの基本診療料を抜本的に増額し、全保険医の医療行為の充実のための原資にすべきである。


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