「人種差別」抗議運動の根底にあるもの すべての生命と尊厳を最大限尊重する

今年5月に米国ミネソタ州・ミネアポリスで起きた、白人警察官による黒人男性殺害事件は、米国内にとどまらずヨーロッパそして日本でも抗議デモが行われる現象を引き起こした。6月にも、アトランタで黒人男性が白人警官ともみ合いの末射殺されており、この件では射殺された黒人男性が犯罪絡みであったとはいえ、米国内で根深く問題として横たわっている白人優位の思想、それによる黒人への暴力行為が半ば公然と行われている現実を突きつけたということに変わりはない。

その最たる象徴ともいえるのが、トランプ米国大統領の姿勢だ。もともと「アメリカ第一主義」を公然と掲げ、新自由主義への道を突き進む政策を目指してきたトランプ氏は、考えを同じくする一部の米国民の支持を受けて今日までなりふり構わず強者の論理に基づいた単純な進歩史観の下、米国だけの発展・繁栄のための政治を繰り広げてきた。

この度の黒人男性殺害事件においても、差別根絶を訴えて集まっているデモの参加者に対してトランプ氏は「軍を出動する用意」を考えていることを強圧的に示すことで、ますます国民の反感を買う状況を作り出した。彼の頭の中には人類の平等性はインプットされていないのであろう。

振り返ってみれば、自由の国を謳う米国は差別との闘いの歴史を持つ国でもあった。女性、黒人、黄色人種、ヒスパニック、性的マイノリティといった人々にとっては、これまでも、そしてこれからも偏見・差別との闘いは継続されていくのである。

今回の抗議運動の根底にある主張とは、すべての人類の生命と尊厳を最大限尊重することにある。これは米国に限った話ではない。個人主義・合理主義を前面に押し出し、サクセスストーリーを達成した者にとってはまさしく極上の生活を享受できる道が広がる一方で、そうしたレールに乗ることができず経済的・社会的に困窮する人々への視点が欠如している社会に警鐘を鳴らすことは非常に重要である。

国際社会をより良いものにしていくために求められる要素の一つに、人種差別や不平等に反対する世界中の多くの人たちと繋がることがある。コロナ禍における世界規模での人類の迷走にストップをかける大きなヒントがここにある。

性別・国籍・主義・主張・信条・宗教などの、いくつもの垣根を乗り越えた先に解決の光が存在するのだということを、今あらためて認識しなおす時期が実はすでに訪れているのである。


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