2022年度診療報酬改定において、2月9日に中央社会保険医療協議会(中医協)で答申が行われ、湿布薬における「理由を記載せずに処方できる1回あたりの枚数上限」が現行の70枚から63枚となる事が明らかになった。
中医協ではこれまで「湿布薬処方の適正化」として1回35枚までを原則とする議論が進められてきたが、保険医協会は「患者が必要な医療を受ける権利を侵害する」として「湿布35枚処方制限に反対する」署名に取り組んだ。
緊急の署名提起にも関わらず、多くの会員の先生方にご協力をいただき、中医協へ働きかけたことで、35枚制限を押し返すことができた。これは大きな成果であり、会員の先生方には改めて感謝を申し上げたい。
しかし、次期診療報酬改定の答申内容には他にも問題があり、特に薬の処方に関しては「リフィル処方」の導入が盛り込まれたことは大きな問題である。
「リフィル処方」とは、症状が安定している患者に対して、医師の処方により、医師及び薬剤師の適切な連携の下、一定期間内に処方箋を反復利用できる仕組みのことである。
患者の中には「リフィル処方」について「受診せずに薬局でいつもの薬がもらえて便利」と考える方が出てくるかもしれない。しかし、リフィル処方箋の使用が想定される慢性疾患の患者は、医師による診察及びきめ細かな指導管理が必須であり、微細な容態の変化に迅速に気付き、的確に対処する事が不可欠である。リフィル処方箋を単純に「便利なもの」と捉えるのは危険である。
また、リフィル処方後は薬局において薬剤師に病態の対応を求めることとなるが、薬剤師に与えられている役割と責任の範疇を超えている。こうしたことから、リフィル処方箋の導入は患者の健康確保上から極めて問題が多いと言える。
実際に医療現場からは「患者が必要な医療から遠ざかってしまう事で病状悪化が心配される」など懸念の声が出されている。
さらに、医療機関の経営面についても、慢性疾患患者を多く抱える医療機関への影響が大きいと考えられる。国はリフィル処方の導入によって100億円程度の医療費削減を見込んでおり、患者の健康維持という観点から導入したものではないことは明白である。
コロナ禍で処方の長期化が一層進んでおり、患者の病態管理がより難しくなっている中で、患者の「利便性」と称して外来医療費の抑制を図るとともに医療関連ビジネスの収益拡大を進める狙いを見過ごすことはできない。
このように問題点の多いリフィル処方の導入は到底受け入れられるものではなく、導入について強く撤回を求めるものである。
保険医協会は患者の必要な医療を受ける権利と医師の裁量権を守る立場で今後も様々な運動を進めていく。ぜひ、先生方のご協力をお願いしたい。