日本国憲法の危機に際し訴えます

 

参議院選挙が重大な岐路に

 

 「九条の会」は、日本国憲法第9条が大きな試練にさらされた2004年6月に、作家の井上ひさし、大江健三郎、小田実、評論家の加藤周一さんなど著名な9人のアピールで発足しました。私たち「おおさか医科・歯科九条の会」は、その2年後の2006年2月26日に、「九条の会」のアピールに応え、大阪の医師・歯科医師の有志約300人の賛同でスタートし、世界に誇る憲法9条を守りあらゆる戦争に反対する取り組みを継続的に取組んできました。

 

しかし、今また日本国憲法はさらに重大な危機に直面しています。先の総選挙で、4割の得票で8割の議席を占めて誕生した自民党・安倍政権は、野党時代の2012年4月にまとめた自民党「日本国憲法改正草案」の実現に向け動きを強め、日本維新の会やみんなの党なども改憲へ同調し、さらに民主党や公明党も揺れ動いています。

 

この改憲草案では、憲法9条2項を削除して「国防軍」を書き込み、アメリカの戦争に堂々と加担できるようにすること、基本的人権を「侵すことのできない永久の権利」としている憲法97条を全面削除し、また天皇や大臣、国会議員、裁判官などの公務員にのみ課せられていた憲法擁護義務を改変し、すべての国民に「憲法尊重義務」を課すなど、憲法の性格を「権力を縛るもの」から「国民を縛るもの」へ180度転換するものです。

 

さらに改憲派は、あらたに突破口を憲法96条改定手続きの緩和に見出し、現在の改憲発議要件である両院の3分の2議席以上から過半数とすることを打ち出しています。しかしこれは単なる手続きにとどまらない重大な問題を孕んでいます。即ち、近代立憲主義=憲法は主権者・国民の人権保障のため、憲法によって権力者を縛るという考えと、それを担保するために憲法は法律と異なり安易に改変できない重い存在としてきたものを、根本から否定するという時代に大きく逆行するものです。

 

このような改悪を断じて許してはなりません、私たちは、かつての悲惨な侵略戦争の敗北という痛切な教訓から生まれた日本国憲法こそ、戦後の歩みが示すように、平和の支えであり世界平和に貢献する最大の宝だと確信しています。96条改定論に対しては、旧来の改憲論者の中からも強い反対の声が上がり、5月23日にはこうした立場の研究者なども含めた「96条の会」が新たに発足しました。

 

来る参議院選挙は、このような流れの中で、憲法改定に踏み出すのか、あるいは憲法をさらに生活に生かすのかを、私たち主権者が判断し選択する重大な機会です。是非とも将来に悔いることのなきよう、賢明な選択を呼びかけます。

 

                2013年6月

 

           おおさか医科・歯科九条の会 呼びかけ人一同 (50音順)

 

 

 

有地 正 (元枚方市歯科医師会支部長)     

 

池田 信明(特定医療法人・同仁会理事長)

 

小澤 力 (大阪府歯科保険医協会理事長) 

 

笠原 浩 (松本歯科大学教授)      

 

城戸 良弘(大阪大学医学部名誉教授) 

 

玄番 央恵(関西医科大学名誉教授)   

 

新宅 雅文(元河内長野市歯科医師会支部長) 

 

高本 英司(大阪府保険医協会理事長) 

 

玉川 尚美(大阪女性医師・歯科医師の会世話人)

 

中村 厚(大阪府保険医協同組合理事長) 

 

野崎 京子(大阪府保険医協会理事) 

 

花田 力 (元大阪市平野区医師会長) 

 

林 哲平 (大阪市淀川区・歯科医師)

 

森 昌彦 (朝日大学歯学部名誉教授)